2014/08/31
荻田繁男の診療室があるのは横浜市栄区であった。
私の住む神奈川区までは、夜中ならば２０分もあれば帰って来れる。
荻田繁男は、別れる時には、
「気を付けてお帰り下さい」
と言って必ず力比べをする様な握手をする。
別れて車を運転して帰宅の途につく。
すると別れて数分もしないうちに携帯電話が鳴る・・・夜中の２時過ぎである。
「（こんな時間に一体誰だ？）」
と思いながら電話を取ると
「今日は本当に有難うございました。今どの辺りですか？」
さっき別れた荻田繁男であった。
「今、○×です。」
「順調ですね！気をつけてお帰り下さい！では後ほど・・ブチッ」
私は、電話を切る荻田の顔を思い浮かべながら
「気を付けて・・・って・・この電話が危ないんだよね！」
と独り言を言いながら
「？？では後ほど・・？？後ほどって？？」
そんな事を考えているうちに再び電話が鳴る
「順調ですか？」
「とっても！」
そのやり取りが家に到着するまでに５～６回続く・・・
「やっと駐車場に着きました！」
「そうですか！お疲れ様でした！これで安心して眠れます！」
ここで初めて飲み会が終わる。
小学生の頃、校長先生が遠足の終わりに「家に帰り着くまでが遠足です」と言っていた様に、校長先生の荻田繁男が「家に無事に帰り着くまでが飲み会です」と言っているのが聞こえるようである。
この話を人にすると
「惚れられたんですね！まるで馬鹿カップルみたいですよね！」
「？？馬鹿カップル？？？」
「よくいるでしょう！ 駅の改札で別れてホームに上がって来たら携帯が鳴って・・取るとさっき別れた彼女から電話で「今どこ～？」「えっ？ 今～？ 今ホームだよ～！」みたいな事をやっている馬鹿カップル」
「ははは・・確かに」
これもいい思い出である。
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